プルメリアと偽物花婿
「和泉は私のこと一番に考えてくれててすごく嬉しいけど、すごく気遣ってくれるけど、私和泉にされて嫌なことないよ。全部嬉しいよ」

 顔を恐る恐る上げてみると、和泉はこちらをじっと見ていた。恥ずかしいけど、私からもちゃんと言葉にして伝えないと。

「和泉が好き、ずっと一緒にいたい」
「――先輩、それってプロポーズですか?」
「えっ、プロポーズ!? そ、そういうつもりはなかったけど、でも、ずっと一緒にいたいのはそうです……」
「ふふ、冗談ですよ。プロポーズは今度俺からさせてください」

 和泉がようやく表情を和らげてくれたと思ったら、和泉の太い腕が私に回される。ぎゅっと抱きしめた後にそっとキスを落とされる。

「……いずみ、ここ玄関です」
「そうでした」

 和泉はそう言うと私を軽々と抱き上げて、そのまま和泉の部屋に連れていく。
 和泉はベッドに座ると、私を膝の上に乗せたまま顎を掴む。

「和泉、フレンチトースト作りかけじゃなかった?」
「そうでしたね」
 
 そう言いながら頬に首にキスを落とす。

「先輩」
 
 和泉は右手で私のほっぺをむにゅ、と挟んだ。

「……ふぁい」
「なんでこの一週間おかしかったんですか? なんかありましたよね?」
「…………」
「話すまでフレンチトーストはお預けです。何かまたうじうじ考えてましたね? 全部吐くまでここにいてもらいます」
「……すみません」

 和泉はにこにことした表情のままだけど、私をここから絶対離さないという圧を感じる。

「色々考えても無駄ですよ。俺は先輩のことがずっと好きなんですからね。嫌になることなんてないんで、先輩が俺のこと好きでいてくれるなら悩む必要なんてないと思うんですが」
「和泉は中学生の時に私のこと好きになってくれたんだよね」
「まあ、当時は好きというより憧れだったとは思うんですけどね」

「私は和泉に憧れてもらえることをしてなかったんだよ。……あの空き教室は、好きな人を待ってたの」
「知ってますよ、当時も言ってましたし」
「……その相手は、先生だったの。山岡先生」

 何にも気にしてないといった表情の和泉もさすがに目を見開いた。……やっぱり幻滅されるだろうか。
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