プルメリアと偽物花婿
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　和泉拓真(いずみたくま)は半年前に私の部署にやってきた二十五歳。私の隣の席の後輩。

　私たちの会社は大手IT企業で、ゲームアプリからファッションアプリまで様々なスマホコンテンツを手掛けている。
　私と和泉はメディアコンテンツ事業部に所属していて、その中で女性向けアプリ『andU』を担当している。【女性のキラメキに寄り添う】をコンセプトに、ファッションやメイク用品、おすすめスポットを紹介するWEB雑誌の機能とおすすめ商品を販売するEC機能があるアプリだ。
　私と和泉は営業チームに所属していて、広告や商品を掲載したい企業とのやり取りを担当している。

　新卒入社以来、私はずっとメディアコンテンツ事業部で、和泉は部署異動するまではゲームコンテンツ事業部のマーケティングチームにいたみたい。二千人はいる会社なので、ゲームコンテンツ事業部とはほとんど関わりがなく、和泉と出会ったのは半年前。

　そんな私たちには共通点がある。
　私たちは地元が同じで、更に同じ高校出身だったのだ。といっても、和泉とは三つ離れているから在校時期は被っていなくて元々知り合いというわけではないのだけど。名物教師の話なんかで盛り上がる事はできたし、この広い都会の中で新幹線で数時間かかる地元が同じと言うだけで親近感は湧くものだ。
　
　地元が同じだからと、和泉のメンターは私が指名されてしばらく同行することも多くなり、自然と仲は良くなった。というより和泉が懐いてくれた。
　私の同期で親友の菜帆と飲みに行くときはちゃっかり和泉もついてきたりして。自他ともに、和泉とは仲良くやっていたと思う。

　でもそれは、あくまで、本当に、ただの先輩・後輩として。
　
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