プルメリアと偽物花婿
安心していいって言ったのに!
ものの十秒で私は簡単にベッドに横たわり、和泉は先程と変わらない笑顔のまま私を見下ろしている。
「和泉、私、実は……!」
起き上がろうとするとまた優しく倒されて、頬を軽く撫でられる。
「クマひどいので寝ましょう。明日写真撮影もありますから」
「……え」
「俺はソファで寝るんで、おやすみなさい」
またからかわれた……!
和泉ってこんなことするタイプだったの!? 一瞬見えたいたずらな顔を見逃さなかったよ……!
「私まだ歯磨きしてないし」
このまま押し倒されたままというのも悔しくて起き上がってバスルームに向かう。後ろから「そうですか、おやすみなさい」と和泉の呑気な声が聞こえる。
洗面所の鏡にうつる私は茹でダコみたいで、その事実に気づいてますます身体が熱くなった。
私だけこんなに真っ赤になってて……和泉はあんなに涼しい顔で。
私のこと結婚したいくらい好きならもっと、なんというか、慌てたり照れたりしないのかな!? 本当に私のこと、好きなの!?
それとも恋愛レベルが高いと、少しのことでは動じないでいられるんだろうか。
顔を洗って赤みが完全に引いてから部屋に戻ると、ソファで横になった和泉は安らかな寝息を立てている。足はやっぱりはみ出してるけど。
私は広いベッドに一人入り込むけど、なかなか眠れずにいた。