プルメリアと偽物花婿
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チャペルの扉が開く十秒前に和泉は言った。
「今から誓うこと、全部本当なので」
その言葉を確認しようと隣を見た時には、チャペルの扉は開かれていて。和泉は真っすぐ前を見ているから、私も音楽に合わせてバージンロードを歩くしかなかった。
和泉にエスコートされながら白い大理石を歩く。私たちがたどり着く先の祭壇はガラス張りになっていて、豊かなガーデンの緑と、奥に海の青が広がっている。天井も高く、左右の窓からも陽光が入り込み白く輝き、室内と思えないほど明るくどこか神秘的な空気だ。
自然と姿勢が良くなって、緊張しながら歩みを進める。祭壇に到着すると神父が私たちを優しい目で見つめてくれている。
……演技にしては、偽物のウエディングにしては。かなり壮大で。厳かで。本当にこれでいいのだろうかと、今さらながら思ってしまう。
でもそれは本当に今さらで。鮮やかな色のムームーを着た現地の女性が讃美歌を歌い始めた。日本の挙式に参加した時の聖歌隊の優しいハーモニーと違い、力強く讃美歌を一人で歌い上げていて。その圧倒的な歌唱力に、挙式だということも忘れて感動してしまった。
彼女が歌い終わって和泉と目が合う。非現実に圧倒されている中で、和泉だけは日本と変わらず私に微笑む。
「先輩、俺たち二人きりですから。俺からの誓いだけ受け取ってください」
小声で私に呟く。本当に和泉はずるい。本当にこれでいいの、と思うたびに甘やかされてしまう。
そうしている間に神父に促され、私たちは祭壇に跪いた。聖書を読んでくれているみたいなので、目を閉じてお祈りをする形になる。
お祈りというと、永遠の愛を願うのかもしれないけど。私は優しくて面倒見のいい後輩の幸せを願っておくことにした。
ハワイ挙式といっても、日本人向けの挙式なので。基本的には日本の結婚式場と同じ式の流れだ。