プルメリアと偽物花婿
 私はこういう何にもない風景を眺めるのが結構好きなのだとハワイに来てからひしひしと感じる。普段の生活では気付けなかったことだけど。そしてそういうとき、和泉も同じく景色を眺めているのがやっぱり嬉しかった。

 沖に到着して簡単に説明を受ける。いくつかのマリンスポーツが体験できるが、参加者も多いのでローテーションで順番にやっていくということだった。
 私と和泉に最初に割り振られたのはバナナボートだった。ライフジャケットを着て文字通りバナナの形をしたボードに乗り込む。四人乗りなので、他のカップルも一緒に乗り込んだ。そのボードをモーターボードがけん引していく。

 ボードに座ると合図があり、すぐにモーターボードが発進した。大きな水しぶきをあげてどんどん加速していく。身体が浮くほどにバナナボードは上下に激しく揺れる。

「わわわ……!」

 情けない声を上げる私の隣で和泉も大きな声で笑っている。スピードと大きな揺れはスリルもあるけど楽しい。激しく揺られているうちに、私の身体はふっとんだ。
 バナナボードは海にそのまま振り落とされるのも楽しみの一つだ。思い切り飛び込んでから海に浮かんでみると、和泉や同乗していたカップルも海に浮かんでいて、誰もが自然と笑顔になる。
 
「めっちゃ楽しかったね」
「大笑いしました」
「ジェットコースターよりこっちの方が好きかも」

 私たちが感想を言いあって船に戻ると次はジェットスキーに案内される。二人乗りだから和泉が運転してくれることになり、私は和泉の後ろに座る。すぐにインストラクターからもっと引っ付けと指示が飛んでくる。

「し、失礼します……」
「あはは。遠慮しないでちゃんと捕まっててくださいよ」
 
 おずおずと少しずつくっつく私に和泉は笑った。
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