プルメリアと偽物花婿
 お互いライフジャケットを着ているから、素肌が触れ合うわけではないけど。ライフジャケットのすぐ下は水着なのだから少し意識してしまうのは仕方ないよね……?
 むき出しの素足が、前に座っている和泉の太ももに触れて驚いてしまう。自分の男耐性のなさが本当に恥ずかしい。

「じゃあ出発しますよー」

 和泉の声に合わせてジェットスキーは発車した。先ほど激しく上下には揺れないものの、想像していたよりスピードが出て、反射的に和泉のお腹にぎゅっとしがみつく。照れとかそういう問題ではない。和泉がぐるんとカーブを描くと遠心力で吹き飛ばされそうになってしまうから。
 和泉はスピードが出ると面白くなってしまうみたいでけらけらと笑っている。大人っぽく見える和泉の年相応にはしゃぐ姿に私もつられて大きな笑い声をあげた。
 ……停車するときはその距離にどぎまぎしてしまったのだけど。

 そのあとはカヌーに乗ってみたり、ウィンドサーフィンをしてみたり。これが案外難しく、カヌーはかなり力がいって腕はつりそうだったし、ウィンドサーフィンは立つことすらできなかった。
 一旦お昼休憩を挟み、私たちは船の中で支給されたお弁当を食べた。
 
「カヌーより、モーターボードに運ばれる方が楽でいいな」
「それはそう」
「和泉はウィンドサーフィンも軽々出来てたじゃん、経験あるの?」
「ありませんけど、俺運動神経いいんですよね」
 
 なんでもさらりとこなしてしまう和泉らしい発言だ。この男に弱みなどないのかもしれない。可愛い顔をして全く可愛げがない。

 次に私たちはシュノーケリングを楽しんだ。水にぷかぷか浮かびながら水の中を見るだけなので、底の方まで行けるわけではない。
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