プルメリアと偽物花婿
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 冷静に考えると、なんてことをしてしまったんだろう。
 でも後悔してももう遅い。飛行機はぐんぐんと上昇している。ここから飛び降りることは不可能で、七時間の空の旅が確約されている。
 隣は空席。山田さんが座る予定だった席だ。和泉は離れた席についているので、こうして一人でいるとようやくいろんなことが考えられるようになってきた。
 
 飛行機に乗り込むまでの私は半分ヤケになっていたと思う。空港メシを食べて。免税店を覗いて。ハワイの行きたいスポットを見たりなんかして。元々和泉と最初から一緒に旅行に行く予定だったみたいに。こうなったらハワイ楽しむかあ! なんて気持ちにすらなっていたけど。
 一人になって冷静に考えると。とんでもないことをしてしまっているのではないかという気分になってきた。

「どうしよう……」

 小さく呟いてみるが、どうしようもない。もうハワイに向かってしまっているのだ。
 地上は当たり前に見えないし、外は暗くて何も見えないけどもう雲の上だ。

 眠るにはまだ早い時間で、周りは映画なんか見始めている。私もそれに倣って、何か映画を見ようかと画面を操作してみるけど、とてもそんな気にはなれない。
 
 山田さんのことを考える。彼とは結婚できない。それは、もうまぎれもない事実……なんだと思う。

 山田ヨシオさんとは半年ほど前に、婚活アプリで出会った。
 
 二十八歳、周りも自分も結婚を意識する時期。だけど私はもう恋愛をする気はなかった。でも「結婚」はしたかった、出来るだけ早く。ある理由で。
 恋愛結婚をするつもりはない、ううん、出来ない。恋愛を求めないのであれば行動は早い方がいいだろう。そう思って、婚活アプリや結婚相談所にすぐ登録をした。
  
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