プルメリアと偽物花婿
「すごいね、ハワイだね」
「五日目の感想と思えない新鮮な感想ですね」
「夢みたいな日々だったなあ……」

 昨日クルーズ船から見た夜のワイキキも美しかったが、昼のこの景色はまた別の感慨深さがある。爽やかな光景のはずなのに、なぜか切なかった。

「先輩がハワイの日々を楽しく思ってくれて良かったです」
「本当に。出国前のあの絶望から考えると信じられないよ。本当にありがとうね、和泉」
「はあ、俺ってどんだけ運がいいんだろうなあ、幸せ者すぎませんか? 宝くじが当たったみたいです」
「でもあの時隣にいてくれたのは本当に運が良かったよ、私がね」

 しばらく私たちは景色を眺めながら、私たちのホテルや食事をした店を発見したり、思い出を話した。和やかで愛しい時間だ。
 
 下山は、膝にくるけど登山のようなしんどさはない。あっという間に下り終えてしまった。

 また一つ思い出が増えて、また一つハワイのイベントが終わってしまった。
 
 
 ダイヤモンドヘッドからホテルまで、私たちは歩くことにした。観光地や立ち寄りたい場所がいくつかあったからだ。
 カピオラニ・パークというハワイで一番古くて大きな公園に向かい、近くのカフェでテイクアウトしてきた軽食を食べることにした。
 先ほど登ったばかりのダイヤモンドヘッドを一望しながら食べるサンドイッチとフルーツスムージーは最高で、そしてやっぱり切なかった。
 
 気になった店があれば入る、ホテルの方面に向かって歩くを繰り返しているうちにカラカウア通りまで戻っていた。そこでもまたショッピングを続けて、お土産をどっさり購入してホテルに戻ったころには夕方になっていた。

「今日はさすがに疲れましたねー」
「本当に。明日は足がガクガクになってそう」
「明日は帰る日ですから問題ないですよ。俺がお姫様抱っこして、搭乗してもいいですし」
「さすがに歩けます」
 
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