プルメリアと偽物花婿
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「うわー、ハワイだー!」
「三ヵ月前にも来たんでしょ」
「関係ないですよ。ハワイは浮かれる場所です」
私たちは旅行会社が手配してくれたバスに乗って、ホノルル空港からワイキキに到着した。
夜に出発して、少し眠り、到着したのは朝だから時間経過的にそこまで違和感はない。だけど温度や湿度、日の入り方が違うのはなんとなくわかる。
バスの中でもそれを感じてワクワクしていたけど、実際にメインストリート・カラカウア通りに出ると、本当にハワイにいるのだと実感が湧いてくる。
ハワイの街並みと言われてぱっと思いつくような、写真でよく見る光景がそこにはあった。ショッピングスポットやホテルなど大きな建物が並んでいて、街路樹の背の高いヤシの木はどこまでも続いていて。車道を行きかう車もここは海外だと主張している。空気はからっとしていて日差しは強いのに不快感はない。
「私は初めてなの、ハワイ」
「俺も前回が初めてなんで、詳しくはないですよ」
飛行機の中で暗く沈んでいた気持ちが晴れていくみたいだ。憂鬱な気持ちを吹き飛ばすほどの光景が目の前に広がっている。
……どちらにせよ、山田さんとの縁は切れてしまったのだ。ブロックされたし。すがってみたところで、彼と終わりなことはもう変わりない。
「よし、こうなったらハワイ楽しもうかな!」
「お、気持ち切り替わりました?」
「もう考えてても仕方ないもんね……どっちにしろ話し合いは帰国後しか無理だし。この一週間は忘れて楽しんじゃおっかな」
「そうですよ! せっかく別世界に来たんですからね。帰国したら慰謝料ふんだくりましょう」
うん、その通りかもしれない。嘘みたいに青い空が私を元気づけてくれている。この一週間は何もかも忘れてしまったっていい。
それにこの旅行、いくら払ったと思ってるんだ。楽しまないと損な気がしてきた。
「飛行機疲れもあるでしょうし、まずはメインストリートを少し散歩しましょうか」