プルメリアと偽物花婿
　自然とそう返してしまい恥ずかしくなる。お酒もまだ数口しか飲んでいないのに酔っている時みたいに素直な心が出てしまった。
　でも和泉といると心がどうしても緩んでしまう。

「やっぱり先輩って俺のこと好きじゃないですか？　結婚しましょうか」
「すぐそういうこと言う」

　だけど言葉が柔らかくなってしまって、私たちの会話を客観的に見ると所謂いちゃついている会話ではないだろうか。

「結婚はともかく、一緒に暮らしましょうよ」

　和泉は柔らかい表情のまま、そう言った。
　もう嫌だな。一日一人で過ごしただけで、その提案に頷きたくなってしまう。

「でもすぐに同棲なんてしていいのかな」
「同居じゃなくて同棲って言ってくれるんですね。まあ先輩が真面目なのはわかってます。
　――だから先輩の新しい家を探すまで、でどうですか？　退去日まであと二週間しかないんですよね。物件自体は数日で決めないといけないんですよ。この一週間、たまりにたまった仕事で残業続きも予想されます。現実的に考えて、新居を探して荷造りして引っ越しなんて無理じゃないですか？」
「……それは仰る通りです」

　今日も物件を探すとき「即入居可」でしか探すことができなかった。その条件で探すと限られてしまい、なかなかいい物件が見つからなかった。

「俺の家に七月中だけでいいから住んでください。同棲じゃなくて、家を決めるまでの間借りと思ってください」
「……正直それはすごく助かる。お願いしてもいいですか」
「はい。先輩は俺の彼女ですから」
「なんか……和泉の営業成績のよさを思い知った」
「あはは。双方にメリットがあるいい取引でしょう？」

　気づけばずっと和泉のペースにハマっている。この甘い環境から抜け出せるのかもうわからない。
　
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