プルメリアと偽物花婿

「キッチンすごいね、おしゃれな上に機能的で。あ、私の料理には全く期待しないでね。和泉は料理ってするの?」
「するときはしますけど、ハワイに行ってからは全くしてませんね」
「この数日は本当に疲れたね……」

 お互いを労いながらサービスでついてきたコーラで乾杯する。
 
 お腹が空いていたから二人でぺろりと食べてしまった。
 食べ終わると、なんだかそわそわとしてくる。
 
 人の家にお邪魔するというのがそもそも久しぶりだし。
 ここが自分の家になるというのも不思議な感覚だし。
 和泉とこうして二人きりの時間を過ごすのも、一週間ぶりくらいだ。……しかも、一応恋人……なわけだし。

「――先輩、聞いてますか」

 ぼけっとしていた私に和泉が声をかける。

「あー、ごめん。聞いてなかった、なんだった?」
「ゴミ箱のことですよ。このゴミ箱が可燃ごみで、こっちに缶を入れてください」

 和泉は真面目にゴミの分別について教えてくれているのに呆けてしまっていた。

「このマンションは一階に専門のゴミ捨て場があって曜日とかはありません。出いつしてもらってもいいですから」
「はい。お世話になるのは一ヵ月とは言え、家事の分担とか決めておく?」
「まあ家事というほど家事もないんでいいですよ」

 和泉がそれぞれ家電を紹介してくれたけど、どれも最新のもので。
 深型の食洗器に、ロボット式掃除機。
 洗濯機は洗剤をいちいちはからなくてもいいし、洗濯機の上にはガス乾燥機があるから干さなくてもいい。
 ……下着を見られるのが恥ずかしいから、私が洗濯機の出し入れ担当になったくらいだ。

「食事はその都度考えましょう。残業とかそれぞれの予定もありますし」
「そうだね。そうしよっか」

 家事について取り決めをしながら、宅配ボックスや、お風呂のボタン関係など家の機能を簡単に説明してもらう。
 最後に今日使った皿を入れながら、食洗器の使い方を教えてもらったところで和泉の説明は終わった。

 同時に、先ほどの居心地の悪いそわそわとした気持ちがまた出現する。
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