プルメリアと偽物花婿

 和泉を見てみると、面食らった表情をしていた。

「え? なんて言いました今」
「和泉の気持ちが変わるかもしれないって言った。私と一緒にいて、やっぱり違ったって思うかもしれないから。そしたら結婚もできなくなるわけだし」
「…………」

 和泉は黙って何やら思案している。やや間があって、

「変わりませんけど」

 呆れたような顔をされる。

「そんなこと言ってわかんないよ。私の方が三歳も上だから和泉よりすぐ老けるし、もっと可愛くていい子がいるかもしれないし。私あんまり面白みのない女だし、家庭的でもないし。一緒にいたら嫌になるかもしれない」

 和泉は呆れた表情を変えないまま、私をじっと見る。

「先輩そんなに俺の気持ちが変わることが不安なんですか?」
「え」
「それ、俺のことめっちゃ好きじゃないですか?」

 カウンターパンチを受けた気分だ。さらっと聞かれて、私の顔に熱が集まる。

「心配しなくても先輩一筋なんですよ俺は」

 和泉は私の頬を撫でるのが好きなのかもしれない。ひんやりした手が熱い頬を撫でる。

「可愛い、もう一回キスしてもいいですか」
「しない」
「えー」
 
 キスの代わりに抱き寄せられる。和泉の鼓動の音が聞こえる。あんなに余裕の顔をしているくせに鼓動が早くて、私の鼓動まで連動してしまう。

「ずっと凪紗先輩だけが好きですよ。疑うなら今すぐ役所に行ってもいいです」
「…………」
「先輩が恋に臆病なのは知ってるので、ゆっくりでもいいと思ってましたけど。ゆっくりだと逆に不安になるのかなあ。もっと強引な方がいいですか?」
「結構強引だよね」
「ちゃんと我慢してるとこは我慢してますよ。え、俺様になってました?」
「……なってない」

 和泉はずっと優しい。強引な時も全部強引の仮面を被った優しさだ。……だから抜け出せなくって困る。

「俺のこと好きになるの怖いんですか?」
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