プルメリアと偽物花婿

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 最後に思いだした山田さんとのやり取りは結婚式についてのやり取りだった。

「挙式はハワイというのが僕の理想なんだ。凪紗さん、ハネムーンはハワイがいいと言ってたし。ビーチでフォト撮影もできます」
「確かにハワイのロケーションでの撮影は素敵でしょうね。……でもハワイだとゲストは来れないですよね」
「何か問題がありますか? 今どき結婚式なんて呼ばれても煩わしいだけでしょう。ご祝儀の問題もありますし」
「大々的にしたいわけではないんですよ、身内だけでも。お互いの親族に挨拶周りに行くよりも結婚式で顔見せした方が楽とも言いますし」

 珍しく山田さんは柔和な笑みを固くして押し黙る。

「女性は青い海に白いドレスが憧れじゃないんですか? 凪紗さんも先日写真を見て素敵と言っていたと思ったんだけど。それに親族ならハワイ旅行でもプレゼントして、来てもらったらどうですか?」

 青い海に白いドレス、それを憧れに思っていたのは今思えば田中さんだったのだろう。
 
 ちりりと浮かんだ過去を思い出すけれど、それを上書きしてくれるのは和泉と過ごしたハワイの青い空と海だった。

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「お疲れ様でした」

 和泉とグラスを軽く合わせる。
 デリをテイクアウトして家で食事をすることにした。自分で思っているよりも疲弊していたので外食する気分にはなれなかった。

「すっきりしました?」
「さようならって言えたからね。半年の良い思い出まで完全に消えちゃったけど」

 穏やかだと思っていた人は単に逃げるのがうまくて情けないだけだった。和泉がおろしてくれたシャンパンが、虚しい気持ちを少し流してくれる。

「あんな男だと知ってたら無理矢理にでも強奪したのに。でも良かったです、婚約破棄になって」
「……そうだね。それにしてもあの封筒、本物?」
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