プルメリアと偽物花婿

「恋人として見れないとかじゃなくて、むしろ逆。
――私、和泉のことが好きなんだと思う。違うね。思う、じゃなくて、好きなの。(仮)じゃなくて、これからもずっと一緒にいたい」

 和泉は私の告白にほんの少し言葉に詰まってから
 
「じゃあどうして」
「だからこそ初めからもう一度始めたくて」

 和泉はわずかに目を見開いた。だけど何も言わず待っていてくれている。

「私たちって、初めからハネムーンで、結婚式で、同棲で。流れるままにここにきて。和泉はそれでいいよって言ってくれるし、私も和泉といたいよ。でもずっと和泉に寄りかかってる気がするんだ。そうじゃなくて、もう一回初めからちゃんと恋人になりたい。和泉の隣に胸張って立ってたいから。そう思ってここから出ていくのは変かな?」
「……まあそうですね、変というか、全然理解はできないですね」

 和泉は正直に言うと苦笑した。

「でも凪紗先輩の中で何かがずっとひっかかってて、こだわりの真面目スイッチがあるのはよくわかりました」
「……面倒くさい女で本当にすみません」
「本当にめんどくさいですよね。最初から同棲というのがひっかかってるんですか?」
「うーん、婚約破棄とか引っ越し期限とかそういうものに流されてこうなった、て思いたくないのかも」
「こうやって言ってくれて考えてくれてる時点でもう流されてないと思いますけど?」

 和泉は小さく笑った。
 
 きっとスマートにスムーズに恋を進めていく方法はあるのに。こうやって変にこだわってしまう。だけど自分の気持ちをごまかして、何も言えなくなったから山田さんとはうまくいかなかったのは間違いない。
 あの時、ハワイじゃなくて国内で結婚式がしたいと言えなかったときみたいに。

「でもいいですよ。そんなめんどくさい人、好きなのは俺ですし。それに俺が好きだからこそめんどくさいこと考えてくれてるんですよね」
「そうです。……ありがとう」

 素直に言うと和泉はめんどくさいといいつつ目を細めてくれる。
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