プルメリアと偽物花婿

「和泉、手出して」
「はい」

 和泉は大人しく両手を出すから、私は両手を繋ぐと和泉を引き寄せた。そして和泉の唇にキスをしてみる。

「……な、なんですか突然」

 不意打ちだったらしく和泉は顔を赤くして文句を言う。

「そっか。本当だ。キスしたかったんだ、私」
「よくわからないんですけど」
「和泉のことが好きだなあと思って」
「……そうですか。ちなみに本当に酔っ払ってはないんですよね?」
「疑ってる……」

 和泉は繋がれた両手をさらに深く絡ませると、私を引き寄せてキスをした。

「確かにお酒臭くはないですね」

 顔をほんの少し離すけど、いつでもキスできそうなほどに顔は近い。

「……あんまり見ないで欲しい」
「照れてる先輩見るの好きなんですよ」

 顔を背けようとするけど、和泉は両手で私の頭をガッチリ挟む。じっと見られると顔に急速に熱が集まる。

「凪紗先輩、好きです。俺と付き合ってください。本当の恋人として。一生大事にします」

 いつも和泉がそうするように私は和泉の頬に触れてみる。それからキスをした。

「……先輩。キスして返事をごまかそうとしてませんか?」
「し、してないよ! ……私も和泉にキスしたくなっちゃっただけ」
「はあ。素直になった先輩の破壊力」

 仕返しとばかりにキスを何度も落とされる。

「い、いずみ……」
「あ、そうでした。それで返事は?」

 あっさりと唇を解放されたと思いきや、また顔をじっと見られる。どちらにせよ恥ずかしくて頬が熱い。

「私も和泉のことが好きなので、付き合ってください」
「地元に帰った時はこれで本当に彼氏として紹介してもらえますね」
「結婚はしてないけどね」
「先輩、結婚を前提に付き合ってください。むしろ今から婚姻届書いてもいいんですけど、どうしますか?」
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