プルメリアと偽物花婿
「結婚を前提で、お願いします」
和泉はやったーと小さく呟くと、ぎゅっと私を抱きしめる。
唇にキスを落として、頬を撫でる。撫でた頬にキスを落とす。それからおでこに、鼻に、キスを落とすと、顔を離して私を見ては目を細める。一連の動作はひどく優しく大切に扱ってくれて、触れられるたびに愛されていると伝わってくる。
「かわいい、全部かわいい」
そう言って何度も何度もキスを繰り返す。これ以上はもう苦しくて、甘くて、無理かも……と和泉の胸を小さく叩くのだけど、その手も和泉に絡め取られてしまう。
恥ずかしいからだけではなく、少しばかり苦しくて熱くなった頬を和泉は満足げに確認すると、キスを唇よりも下に移動させていく。
両手は捕らえられていて首に灯る熱にされるがままだ。
「い、ずみ……!」
「なんですか?」
上目遣いでこちらを見る瞳は今まで見たことないほど熱い。
こういう時、私はどうするのが正解なんだろう? されるがままでいいんだろうか。
「先輩かわいい」
このソファ、少し固いんだよね。そうやって意識を別のところに持っていかないととろけてしまいそうで。
後頭部が着地したソファの感想を、ひたすら頭の中に並べてみる。
「一生懸命いろんなこと考えててかわいい」
私を組み敷いた和泉が見下ろす。かわいいという口調はいつも通りの軽いものなのに、表情はどこか余裕がなく。それに気づいてますます私の心臓をうるさくさせる。
もうソファのことも何のことも考えられないくらい、目の前の和泉しか見えない。
だけどまた和泉の顔が近づいてきた。目を閉じて、ただ必死に和泉を受け入れる。うまく呼吸もできなくて、ただ和泉に抱きつくしかなかった。