御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
圭太が声をあげて、龍之介の腕をバシバシとした。

口を大きく開けている。

早く食べ物を口に入れてほしいのだ。でも容器の中は空っぽだった。

「もうおしまいなんだ」
 
龍之介が優しく言って、空っぽの容器を彼に見せる。

「うー!」
 
圭太が怒って龍之介の頬をペチペチと叩いた。

「あ、けいくん」
 
有紗は反射的に謝ろうと口を開きかける。でも、龍之介にじろりと見られて口を閉じた。
 
子供たちのすることに有紗は彼に謝らないという決まりだ。

「足りないか。けっこう量があったのに。よく食べるな、圭太は」
 
龍之介が圭太を覗き込み頬を突く。それに圭太はぶーっとする。

口に付いていたミールの残りが龍之介に飛んだ。
 
はっきりいってやりたい放題だが、彼は少しも気にならないようで、嬉しそうにペーパータオルで圭太の口を拭いている。
 
その目はすっかり父親だ。

「有紗、圭太、まだ足りないみたいだ。このマッシュポテトを食べさせてもいいかな? それとも部屋に追加のミールを取りにいく?」
 
自分の皿のチキンソテーのつけ合わせを指し示す。
 
その問いかけに、有紗は自分の分のマッシュポテトを口に入れて、うーんと考えた。
 
マッシュポテトは、噛まなくても飲み込めるくらいなめらかだし、塩味も効いていないから、圭太が食べても大丈夫そうだ。

でも、外食自体、めったに行かないから少し不安だった。
 
子供たちは、有紗の作ったものか、保育園あるいは市販のベビーフードしか口にしたことはない。

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