御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
べつにランチに行くくらい、なんでもない。

丸山の話では堅苦しい雰囲気は一切ないということだし、自分では絶対に行けないような高級なレストランへ行けるのだ。他部署の同期からは、羨ましいがられるくらいだった。
 
それでも有紗が参加をためらっている理由は、他でもない、主催者である龍之介だった。
 
天瀬龍之介。
 
圧倒的なリーダーシップとカリスマ性をほしいままにする人物。
 
世界を股にかける、東洋の黒騎士。
 
社内の誰もが憧れて彼のもとで働きたいと願う、上司としては非の打ち所がない人物……。
 
だが有紗は、彼に対して苦手意識を持っている。
 
午後の日差しに照らされたベリが丘の街を眺めて、有紗はため息をつく。
 
いつまでも過去の出来事に囚われている自分が情けなかった。
 
正確に言うと、有紗は、彼個人が嫌いなのではない。そもそも直接話をしたことすらない。

ただ、彼のようなリーダーシップのある華やかな立場にいる人物が苦手と言うだけだ。
 
原因は、高校時代に経験した淡い初恋だ。
 
高校二年生の時、有紗は生徒会で書記をしていた。

真面目だということで先生から推薦された役割だったが、活動自体は好きだった。

誰かをサポートする仕事が楽しい、自分に合っている、今も仕事への原動力になっているその思いを培ったのは、この経験があったからだ。
 
そこで有紗は、当時会長をしていた稲葉という男子生徒に恋をした。
 
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