御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
音がしてふたりは振り返る。
 
詩織が手にしていた雑誌を机に乱暴においた。

「あ、うるさかったですか? すみません」
 
有紗が謝ると、彼女はジロリと睨み立ち上がる。カバンを肩にかけて部屋を出ていった。

「大丈夫よ、彼女仕事してるわけじゃないし」
 
同僚がうんざりといった様子で言った。

「もう三年以上たつのに、いつまでここにいるのかな? 十分社会勉強したと思うけど」
 
復帰した有紗が驚いたのは詩織がまだ秘書課にいることだった。確か龍之介は、二年前に長くて一年と言っていた。
 
縁談が誤解だったとしてもやめてると思っていたからだ。

「副社長との結婚話はどうやら眉唾物だったみたいね。すっかり騙されちゃった」
 
呆れたように言う同僚に有紗はドキッとする。噂話はよくないと思いつつ声を落とした。

「副社長とのことは、渡辺さん本人が言ってたって聞きましたけど……」

「そうよ。今でこそあんなんだけど、彼女入った頃はそれなりに愛想がよかったの。雑談中に、聞いてもないのに言い出した。まだ正式に決まったわけじゃないけど、ほとんど決まりなんだーって。せっかく社会勉強するなら将来の旦那さまのそばでする方がいいって、パパに勧められたとかなんとか……」
 
そう言って同僚は、肩をすくめた。

「でも三年経ってもなにもないんだもん。ほとんど決まりだったけど、決まらなかったってことだよね。それか、そう思ってたのか彼女だけだったか。第一、副社長の今までのゴシップを考えたら、ちょっとね。まぁ彼女も美人は美人なんだけど」
 
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