御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
ドアの前に、スーツ姿の龍之介が立っていた。この時間に彼が帰ってくることはもちろん把握していたが、考え込んでいて気がつかなかった。

「おかえりなさいませ」
 
襟元をくつろげながら、彼はこちらへやってくる。そして有紗の手元を見て眉を寄せた。

「それは仕事用のタブレットか? 家で仕事はするな」
 
彼にしては珍しく厳しい声で叱責する。

「やりきれない業務があるなら千賀に言って調整させろ」

「そうじゃありません。ちょっと考えごとをしてただけです」 
 
有紗はタブレットを置いて立ち上がる。適当な言い訳をして誤魔化そうとするけれど、彼は納得しない。

「有紗、はじめから頑張りすぎるな。君が有能なのは知ってるが、一番大切なのは君の身体だ。家では仕事をしないように」
 
歩み寄り、有無を言わせぬように言う。
 
ありがたい言葉に、有紗は頷くが、ならばと思い彼を見る。

「なら龍之介さんもご自身のことを考えてください」

「俺のこと?」

「この二年間、ほとんどまともに休んでいなかったじゃないですか」
 
有紗の指摘に、龍之介が眉を上げた。

「今も……向こう二カ月先までスケジュールがびっしりです。秘書課の皆に確認したら、龍之介さんが入れろと指示したそうですね」
 
なにかあったらどうするのだという気持ちが先行して、少し口調が強くなる。
 
龍之介が肩をすくめた。

「あれくらい大丈夫だ。それにこれからは、君がうまく調整してくれるんだろう?」

「それはもちろん。ですが今は家でも、子供たちのために食事を作ってくれるじゃないですか、休日はそれ以外のことも……それじゃ意味がないです」
 
働き出して一カ月、ずっと気にかかっていたことだった。

いくら業務を調整しても、貴重な休みを家事育児に費やしていては意味がない。
 
それなのに龍之介はまったく意に介さない。

「意味がないわけないじゃないか。君と子供たちのために俺はいる。そう言っただろう? 君たちのことができないなら、休みを取る意味がない」

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