御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
そこで、握っていた携帯が再び鳴る。
画面を確認すると、社長である父、天瀬一郎だった。
「はい」
《ああ、龍之介。今いいか?》
「はい、どうかしましたか?」
訝しみながら龍之介は父に聞き返した。
こんな時間にわざわざ電話してきたことを不審に思ったからだ。
別々に住んでいるとはいえ、父とは会社で毎日のように顔を合わせている。
《最近週刊誌の方はどうだ? まだうろちょろしているか?》
「ええまぁ……ときどき見かけます」
《実は、先日、古い友人から忠告を受けた。おまえが狙われているらしいと。その友人は業界にも顔が効くから確かな情報だと思う》
「なぜ今ごろ……」
龍之介は心底うんざりとして呟いた。
海外駐在時代の騒ぎなど、流行り廃りの速い世間ではもう過去のこと、今さら記事にしてもたいして話題にもならない。
芸能人でもない自分の恋人やら縁談に、いったい誰が興味があるというのだ。
《それがどうやら、そういう目的ではないようなんだ》
「……どういうことですか?」
《久保商事が裏で糸を引いているらしい。あそこの社長は、お前がこの前買収した花田文具を狙っていて実際に交渉に入っていたようだ。だが従業員の待遇面で折り合いがつかず頓挫した。そこへお前が話を成立させたから恨んでいるんだよ。お前を》
ありそうな話だ、と龍之介は思った。
この世界は、一歩外へ出れば足の引っ張り合い。
真っ当な仕事をしていても恨みをかうこともしょっちゅうだ。
《あそこの社長、もともとお前を嫌っていたからな。お前の醜聞を世間にばら撒いてやると息巻いて、週刊誌を焚き付けているらしい。場合によってはハニートラップを仕掛けてくるかもしれん》
「ですが私は独身です。たとえそういう相手がいても不倫にもならない。醜聞にはなり得ない」
《だが近ごろは、なんでもかんでも騒ぎになるじゃないか。独身だからと言って油断はできん。ほら、隠し子がいたといって、引退した役者がいたじゃないか。彼も独身だったじゃないか》
『隠し子』という言葉に、龍之介は有紗と子供たちのことを思い浮かべる。
画面を確認すると、社長である父、天瀬一郎だった。
「はい」
《ああ、龍之介。今いいか?》
「はい、どうかしましたか?」
訝しみながら龍之介は父に聞き返した。
こんな時間にわざわざ電話してきたことを不審に思ったからだ。
別々に住んでいるとはいえ、父とは会社で毎日のように顔を合わせている。
《最近週刊誌の方はどうだ? まだうろちょろしているか?》
「ええまぁ……ときどき見かけます」
《実は、先日、古い友人から忠告を受けた。おまえが狙われているらしいと。その友人は業界にも顔が効くから確かな情報だと思う》
「なぜ今ごろ……」
龍之介は心底うんざりとして呟いた。
海外駐在時代の騒ぎなど、流行り廃りの速い世間ではもう過去のこと、今さら記事にしてもたいして話題にもならない。
芸能人でもない自分の恋人やら縁談に、いったい誰が興味があるというのだ。
《それがどうやら、そういう目的ではないようなんだ》
「……どういうことですか?」
《久保商事が裏で糸を引いているらしい。あそこの社長は、お前がこの前買収した花田文具を狙っていて実際に交渉に入っていたようだ。だが従業員の待遇面で折り合いがつかず頓挫した。そこへお前が話を成立させたから恨んでいるんだよ。お前を》
ありそうな話だ、と龍之介は思った。
この世界は、一歩外へ出れば足の引っ張り合い。
真っ当な仕事をしていても恨みをかうこともしょっちゅうだ。
《あそこの社長、もともとお前を嫌っていたからな。お前の醜聞を世間にばら撒いてやると息巻いて、週刊誌を焚き付けているらしい。場合によってはハニートラップを仕掛けてくるかもしれん》
「ですが私は独身です。たとえそういう相手がいても不倫にもならない。醜聞にはなり得ない」
《だが近ごろは、なんでもかんでも騒ぎになるじゃないか。独身だからと言って油断はできん。ほら、隠し子がいたといって、引退した役者がいたじゃないか。彼も独身だったじゃないか》
『隠し子』という言葉に、龍之介は有紗と子供たちのことを思い浮かべる。