御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして～身を引いたのに一途に迫られています～【極甘婚シリーズ】

彼女との関係にやましいものは一ミリもない。だが周りから見れば違ったものに映るかもしれない……。

《社員にも聞き回っているという話だ。とにかく足元を掬われないように気をつけろ》

「わかりました。ご忠告ありがとうございます」
　
ため息混じりに答えると、父は納得して話題を変える。

《にしても、お前、いつになったら結婚するんだ？　お前もいい歳なんだからいい加減決めないと、そのうち見合いの話もなくなるぞ》

「またその話ですか。何度も言うように、プライベートは好きにさせてください」
　
龍之介はうんざりとして答えた。

《いや俺は社長として言っているわけではない。父親として言ってるんだ。いつまでもお前がひとりじゃ、亡くなった母さんも悲しむ》
　
年代による価値観の違いか、父は自分が独身を通していることがどうしても納得できないようだ。

《渡辺さんとこのお孫さんはどうなった？　まだ秘書課にいるんだろう？》

「彼女との縁談はもう三年以上前に断っています。父さんも知ってるでしょう？　あとは本人の気が済むまでいさせてほしいと渡辺社長から頼まれて、お預かりしているだけです」
　
答えながら、そういえば彼女はいつまでいるのだろうと龍之介は思いあたる。
　
当初は一年やそこらで気が済むと思っていた。普段は気にとめていない相手だが、いつのまにかずいぶんと時間が経っている。
　
彼女の祖父は、龍之介にとって恩人だ。
　
海外駐在時代に、人脈を培うにあたって龍之介と世界の有力者たちに繋がりをつけてくれた。

龍之介のことを買ってくれていて、ビジネスのイロハを教えてくれた人物だ。

それを思うと無下にはできないのがつらいところだ。
　
だが詩織との仲を有紗が勘違いしていたことが二年前のすれ違いに影響していることを思うと、そろそろ社会勉強は終わりにしてほしいと思う。