御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
「真面目で地味な女はうっとおしいって言われました。勘違いするなって。すごくひどい言葉だなって思いました。すごくつらかった……。でも確かに私にはなにもありません。真面目だということしか……」

「真面目のなにがダメなんだ」
 
龍之介が怒気をはらんだ声を出した。

「恋愛には不向きです。だから私、もう恋はしないって決めたんです。ただ好きになっただけでこんな思いをするなら、もう嫌だって。だから誰かを好きになるのが怖くて、龍之介さんのような人を避けてたんです。リーダーシップがある人望の厚い人は、あの彼と重なるから」

「……だから君は、ランチミーティングに来なかったのか」
 
龍之介からの問いかけに、有紗は無言で頷いた。

「龍之介さんの気持ちを信じられないわけじゃないんす。そうじゃなくて私が、どうしても自信が持てないんです。龍之介さんが、なにもない私を愛してくれてるというのが理解できなくて……」
 
なんて弱いんだろう、と心底思う。
 
もう母親になったのに、いつまでも過去の傷跡に苛まれ続けている。
 
こんなに弱い自分はなおさら彼に相応しくない。

そんな負の螺旋階段を転げ落ちているような気分だった。
 
すべての思いを吐き出して泣き続ける有紗に、龍之介が怒りを押し殺したような声を出す。

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