御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
有紗は龍之介に訴える。

「皆さん、子供たちのことについて知りたいのでしょう? 私の口からも説明させてください。業務のことへは口出ししませ……」

「そういうことを心配してるわけではない」
 
龍之介が少し強く有紗の言葉を遮った。

「話し合われるのは、業務のことだけではない。君に聞かせたくない言葉が飛び交うことになる」
 
彼の言葉の意味を有紗はすぐに理解した。
 
天瀬商事の取締役会は、ほとんどが天瀬家の血族で構成されている。

記事に書かれていることが会社経営に影響しなければそれでいいということにはならない。
 
有紗との結婚の話を報告すれば、天瀬家の長男である龍之介の相手として相応しいかどうかまで話題にのぼる可能性がある。

「大丈夫です。なにも後ろめたいことはないって龍之介さんが言ってくださったんじゃないですか。私、大丈夫です」
 
恐る気持ちはもうなかった。
 
彼と再び結ばれたあの夜に、有紗は迷いを捨てたのだ。
 
誰にどう言われても自分は龍之介のそばにいる。

ならば子供たちのことを龍之介の父親に認めてもらうために自分にやれることをしたい。
 
決意を込めて彼を見ると、龍之介が目を見開いた。

「有紗……」
 
皆がいる前ですべてのことを言うわけにはいかないが、それで思いは伝わったようだ。わずかに笑みを浮かべて頷いた。

「わかった」
 
そして部屋の中の皆を見回した。

「時間をもらって申し訳なかった。行ってくる」
 
そう言って部屋を出る龍之介の後を追う有紗に向かって、秘書課の同僚たちが小さくガッツポーズをする。

「真山さん、頑張ってね」
 
それに微笑み返して、有紗も秘書室を出た。
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