御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
着飾っているというだけで、まるではじめてのデートかのように胸がドキドキと高鳴った。

「有紗こそ疲れてないか? 慣れない履き物だから、あまり歩かない方がいいかもしれないな。あそこで少し休憩しようか。花火もよく見えるし」
 
彼はそう言って、ちょうどあいたベンチを指し示した。

そこへ、有紗と龍之介が並んで座り、それぞれの膝に双子を抱いた。
 
子供たちは花火に夢中である。
 
と、そこで。

「あれ? あの人、どっかで見たことない?」

「え? ……本当だ。どこだっけ?」
 
どこかからそんな声が聞こえてくる。おそらく龍之介に対しての言葉だ。

この街では彼は有名人、顔を知っている人はどこにでもいる。

「あの人だよ、ハリウッド女優と熱愛があった……」

「あー! そうだ。へぇ……結婚してたんだ」
 
そんなやり取りに、有紗は一瞬身構える。でもすぐに、大丈夫と思い直した。今はもう誰の目も気にする必要はない。
 
龍之介の結婚は、少し前に世間に向けて発表された。だからもう家族でいることを誰に見られてもいいというわけだ。
 
この街で、堂々と彼と生きていけることが嬉しかった。

「龍之介さん」
 
呼びかけると、花火を観ていた彼が、有紗の方に視線を移した。

「ん?」

「今日は、連れてきてくれてありがとうございました。こうやって花火大会に一緒に来られるなんて夢みたいです」

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