御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
もう随分慣れたけど、やっぱりこんな夜は夢の中にいるみたいな気分になる。

絶対に叶わない恋だったはずなのに、彼と一緒にいられるなんて。

「私、この街で龍之介さんと生きていけるのが幸せです」
 
有紗にとってこの街は、自分の未来を切り開く第一歩になった街。

特別な場所だ。

ここでたくさんのことを学び、愛を知り、涙を流した。
 
自分のすべてがここにある。そんな風に思うくらいだ。
 
素直な思いを口にすると、龍之介が柔らかく微笑む。

夜空を見上げて、感慨深げな声を出した。

「礼を言うのは俺の方だ、有紗。君に出会う前の俺は、この街を好きになれなかった」
 
そう言って彼は有紗は見た。

「この街で生まれて、この街で生涯を終える、俺はそういう運命だ。なにをするか自由には決められない。だから俺はこの街を……どこか檻のように感じていた」
 
日本中の人が憧れるベリが丘の街、なにもかもが煌めくこの街が檻だなんて、他の人か聞いたらあり得ないと思うだろう。
 
でも考えてみればそうなのかもしれない。

彼は生まれながらにして重いものを背負っている。

自分の気持ちを優先してこの街を離れることは許されない。

自由には生きられない人生なのだ。

そのように感じたとしてもおかしくない。

「君と出会って、はじめて俺はこの街を心から好きだと思えたんだ。君と子供たちがいるから、この街で生きていきたいと思えた。……有紗、君のおかげだ。この街に来てくれてありがとう」

「龍之介さん」
 
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