御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
「そういった経緯で私は君に興味を持った。直接話してみて、決まりだと思ったよ」
 
その言葉はありがたいけれど、買い被りすぎだと有紗は思う。
 
巨大な企業を率いているカリスマ副社長である彼の秘書が、秘書業務については完全に素人の有紗に務まるとは思えない。

「ありがとうございます。ですが私、秘書業務ははじめてでして……とても千賀さんの代わりができるとは思えません」
 
不安を口にする有紗に、龍之介が力強く言い切る。

「それについては問題ない」

「副社長……」

「確かに私の秘書は、高い能力が要求される。だが君ならやれると私は思う。君の働きぶりは、浜田課長や海外事業部の他の社員たちが保証したし、なにより誰かをサポートする仕事が好きだと言った君の言葉を信じている」
 
そして有紗を安心させるように柔らかく微笑んだ。

「なにも私は君に明日から千賀のようになれと言っているわけじゃない。私は即戦力しかいらないなんてことは言わないよ。引き継ぎは一カ月あるし、千賀はこれからも秘書室にいるから安心して思い切りやってくれ。新人秘書が少しくらいミスをしても、ダメージを受けない自信はあるよ」
 
最後は肩をすくめて、少し戯けて見せる龍之介に、有紗の胸が熱くなる。
 
雲の上にいる人のはずなのに、社員ひとりひとりの仕事を評価して、その能力を見出し、信じて育てようとする。
 
有紗は、彼の元で働けてよかったと言っていた海外事業部の社員たちのことを思い出していあ。

あの時はなにも思わなかったけれど、今の有紗も彼らとまったく同じ気持ちだった。
 
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