御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
ふたり部屋を出ようとしたところで。
「副社長、私がご同行します」
声をかけられて足を止める。
詩織だった。
「私、エストニア大使夫人とは、パーティでお会いしたことがあるんです。真山さんよりも私が行く方が大使は喜ばれるかと」
立ち上がり、にっこりと微笑む詩織に、有紗は戸惑い瞬きをした。
初日に龍之介が言った通り、詩織には秘書の仕事はまったくしてもらっていない。
彼女もしたいとは言わなかった。
毎日席に座ってネットサーフィンをしているだけ。
出勤していればいい方で、龍之介が不在がちの日などは、そもそも会社に来なかった。
秘書室の他の社員に聞いたところ、はじめは皆仕事をおしえようとしたのだという。
だがあまりにも嫌々でしかもいい加減な仕事をする。
ミスを指摘すると『お父さまに言いつけるわよ』とわめくので、今は好きにさせているのだという。
社会勉強どころか、席をひとつ無駄にしていると陰口を言う者もいた。
仕事をしない、できないということは彼女は自分でもよくわかって普段は外出に同行しようとはしない。
それなのになぜ今立候補するのだろう?
「海外ではプライベートな食事に誘われたら、パートナーを連れて伺いするのがマナーです。ですからこの場合は、秘書ではなく副社長のパートナー役を務められる者が同行するべきです」
もっともらしく言いバッグを持って立ち上がる。
その彼女に、龍之介が待ったをかけた。
「いや、今日は真山さんにお願いするよ」
「えー、どうしてですか?」
「非公式と言っても、ビジネスの話になる。君にはまたの機会にお願いするよ」
有無を言わさずそう言う彼に、詩織は不満そうではあるものの素直に引き下がった。
「……わかりました」
龍之介が小さくため息ついた。
「真山、行くぞ」
「はい」
「副社長、私がご同行します」
声をかけられて足を止める。
詩織だった。
「私、エストニア大使夫人とは、パーティでお会いしたことがあるんです。真山さんよりも私が行く方が大使は喜ばれるかと」
立ち上がり、にっこりと微笑む詩織に、有紗は戸惑い瞬きをした。
初日に龍之介が言った通り、詩織には秘書の仕事はまったくしてもらっていない。
彼女もしたいとは言わなかった。
毎日席に座ってネットサーフィンをしているだけ。
出勤していればいい方で、龍之介が不在がちの日などは、そもそも会社に来なかった。
秘書室の他の社員に聞いたところ、はじめは皆仕事をおしえようとしたのだという。
だがあまりにも嫌々でしかもいい加減な仕事をする。
ミスを指摘すると『お父さまに言いつけるわよ』とわめくので、今は好きにさせているのだという。
社会勉強どころか、席をひとつ無駄にしていると陰口を言う者もいた。
仕事をしない、できないということは彼女は自分でもよくわかって普段は外出に同行しようとはしない。
それなのになぜ今立候補するのだろう?
「海外ではプライベートな食事に誘われたら、パートナーを連れて伺いするのがマナーです。ですからこの場合は、秘書ではなく副社長のパートナー役を務められる者が同行するべきです」
もっともらしく言いバッグを持って立ち上がる。
その彼女に、龍之介が待ったをかけた。
「いや、今日は真山さんにお願いするよ」
「えー、どうしてですか?」
「非公式と言っても、ビジネスの話になる。君にはまたの機会にお願いするよ」
有無を言わさずそう言う彼に、詩織は不満そうではあるものの素直に引き下がった。
「……わかりました」
龍之介が小さくため息ついた。
「真山、行くぞ」
「はい」