御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
「ありがとう」
龍之介が柔らかく微笑んだ。
そしてすぐに申し訳なさそうな表情になる。
「だがそれで君は不愉快な思いをしたわけだ。今まで築いてきた人間関係にヒビが入ったのだろう? ……こうなるかもしれないと予測できなかった私の落ち度だ。申し訳ない」
「ふ、副社長……! 私は、大丈夫です」
突然の謝罪と意外すぎる彼の言葉に、有紗は慌てて首を振る。
仕事内容を話せないのも、それを同期に責められたのも彼のせいではない。こんな風に謝られることはない。
「副社長のせいではありません。秘書が上司の話を漏らさないのは基本中の基本です。千賀さんだって、他の秘書課の人だって皆同じです」
「だが君の立場は千賀とまったく同じではない。千賀は私の遠い親戚にあたる人物で、もともと私の秘書になるために入社した。だから君がさっき経験したようなことにはならなかった。もとは違う部署にいた、その……女性の君を突然秘書に抜擢したらこのようなことになると予測できなかった私の落ち度だ」
眉を寄せて龍之介が言う。心底申し訳なさそうにする彼に、有紗の胸が熱くなる。
世界的な大企業を動かす立場にいる彼が、ただの秘書である有紗に謝るなんてありえない。
これも秘書の仕事のうちと見なかったふりをして捨て置くこともできたのだ。それをこんな風に真っ直ぐに謝罪するなんて。
でもこれが彼なのだと有紗は思う。
立場で人を見るのではなく、ひとりの人間として相手を見る。一社員の事情にも心を砕く、こんな彼だから。
——だからこそ私は……。
「今後も同じようなことが起きるかもしれない。君の社内での付き合いに支障が出るだろう。もし君がつらいならば、私としては非常に残念だが、配置替えも考え……」
「い、嫌ですっ!」
反射的に有紗は彼の言葉を遮る。
龍之介が目を見開いた。
「真山……」
「配置換えなんて絶対に嫌です!」
確かにさっきの出来事は不愉快だった。思い出しても腹が立つ。
だからこそそんなことくらいで彼の秘書という仕事を辞めたくはなかった。
さっき海を見つめていた彼の寂しげな眼差しが頭に浮かぶ。有紗は必死になって訴えた。
「私……私、副社長をお支えする仕事にやりがいを感じています。毎日充実しているんです。これからも、あな……か、会社のために! 働きたいんです!」
彼のために自分にできることは、それほど多くはないだろう。
それでもできることがあるならば、なにを犠牲にしてもいい。彼の役に立ちたかった。
「真山……」
龍之介が目を見開いたまま沈黙し、表情を和らげた。
龍之介が柔らかく微笑んだ。
そしてすぐに申し訳なさそうな表情になる。
「だがそれで君は不愉快な思いをしたわけだ。今まで築いてきた人間関係にヒビが入ったのだろう? ……こうなるかもしれないと予測できなかった私の落ち度だ。申し訳ない」
「ふ、副社長……! 私は、大丈夫です」
突然の謝罪と意外すぎる彼の言葉に、有紗は慌てて首を振る。
仕事内容を話せないのも、それを同期に責められたのも彼のせいではない。こんな風に謝られることはない。
「副社長のせいではありません。秘書が上司の話を漏らさないのは基本中の基本です。千賀さんだって、他の秘書課の人だって皆同じです」
「だが君の立場は千賀とまったく同じではない。千賀は私の遠い親戚にあたる人物で、もともと私の秘書になるために入社した。だから君がさっき経験したようなことにはならなかった。もとは違う部署にいた、その……女性の君を突然秘書に抜擢したらこのようなことになると予測できなかった私の落ち度だ」
眉を寄せて龍之介が言う。心底申し訳なさそうにする彼に、有紗の胸が熱くなる。
世界的な大企業を動かす立場にいる彼が、ただの秘書である有紗に謝るなんてありえない。
これも秘書の仕事のうちと見なかったふりをして捨て置くこともできたのだ。それをこんな風に真っ直ぐに謝罪するなんて。
でもこれが彼なのだと有紗は思う。
立場で人を見るのではなく、ひとりの人間として相手を見る。一社員の事情にも心を砕く、こんな彼だから。
——だからこそ私は……。
「今後も同じようなことが起きるかもしれない。君の社内での付き合いに支障が出るだろう。もし君がつらいならば、私としては非常に残念だが、配置替えも考え……」
「い、嫌ですっ!」
反射的に有紗は彼の言葉を遮る。
龍之介が目を見開いた。
「真山……」
「配置換えなんて絶対に嫌です!」
確かにさっきの出来事は不愉快だった。思い出しても腹が立つ。
だからこそそんなことくらいで彼の秘書という仕事を辞めたくはなかった。
さっき海を見つめていた彼の寂しげな眼差しが頭に浮かぶ。有紗は必死になって訴えた。
「私……私、副社長をお支えする仕事にやりがいを感じています。毎日充実しているんです。これからも、あな……か、会社のために! 働きたいんです!」
彼のために自分にできることは、それほど多くはないだろう。
それでもできることがあるならば、なにを犠牲にしてもいい。彼の役に立ちたかった。
「真山……」
龍之介が目を見開いたまま沈黙し、表情を和らげた。