御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
美味しいしもうひとつ食べたい気持ちはあるけれど、さすがにふたつも食べるのは贅沢すぎるような気がする。

なにせ、このチョコはひと口数千円以上するのだから。

「三種類あるじゃないか。全部の感想を聞かせてくれないと」

「……はい。では」
 
そう言われて食べないわけにいかない。いや、そもそも食べたいのだが……。有紗は真ん中にあったチョコを摘んだ。
 
……そうして感想を言いながら三つ全部食べ終えた有紗は、ほうっと息を吐く。夢みたいな時間だった。

「美味しかった?」
 
龍之介からの問いかけに、有紗は頬を染めて頷いた。

「すごく美味しかったです。美味しいっていうより幸せです。もう普通のチョコに戻れなくなりそう……」

「みたいだね、君のそんな顔ははじめて見る」
 
龍之介が、満足そうに微笑んだ。そして意味深な言葉を呟く。

「次からもここで決まりだな」
 
有紗は少し考えて、ようやくこのチョコレートが、出先でもらった土産ではなく、龍之介が自分で買った土産なのでは?と思いあたる。

「もしかして、これ副社長がご自分で……?」

「たまには秘書のご機嫌を取っておかないと思ってね。人使いの荒い上司から逃げてしまわないように」
 
冗談を言って、にっこり笑う。
 
有紗は唖然としてしまう。気遣いはありがたいが、それしても買ってくる物が贅沢すぎる。

「あ、ありがとうございます。でもこんなに高級なチョコレート……。それに普段からお土産はいただいているのに」

 龍之介が眉を寄せて、渋い表情になった。

「だが君は、たいていの土産は秘書室の皆に配ってしまうだろう? そして君自身はあまり口にできていない」
 
その通りだった。
 
龍之介は役員の中でもずば抜けて多忙だ。必然的にその第一秘書である有紗も秘書課の中では一番忙しい。
 
土産は給湯室へ置いて、バタバタとしているうちになくなっていることがほとんどだった。

「このチョコも、箱ごと渡したら皆に分けてしまっていた」
 
だからこの場ですべて食べさせたというわけだ。

「これは私が君のために買ってきたチョコなんだから、君が食べないと意味がない」
 
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