御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
第2章 一夜限りの恋人
退職
詩織と夫婦になった龍之介のもとで働き続ける。
自分に、そんなことができるだろうか?
有紗はそう心配していたけれど、結局は無用なものとなった。
そうなる前に会社をやめることになったからだ。
故郷で小さな定食屋を営むひとり暮らしの父親から、身体を悪くした、手術が必要になり店を閉めて入院するという知らせがあったのが十一月。
無事に退院したと聞いて胸を撫で下ろしていたのだが、年末に帰省した時には家の中は荒れ放題だった。
有紗と父は、父ひとり子ひとりのふたり家族。小学生の頃に病気で母を亡くしてから、父は男手ひとつで育ててくれた。
母との思い出の定食屋をひとりで切り盛りしていた父は、定食屋を閉めたことでがっくりきたのか、少し自暴自棄になっていた。
定食屋を再開した方がいいのだろうが身体の方はまだその段階にない。
ひとりで切り盛りするのは無理だった。八方塞がりだ。
愛情深く育ててくれた父を放っておくことなどできず、有紗は父を支えるため故郷へ帰る決断をした。
龍之介に対しては申し訳ない思いでいっぱいだった。
せっかく能力を認めてもらい育ててもらったのに、わずか一年で離職するのだ。
君の仕事に対する情熱はそのくらいのものだったのかと、失望されても仕方がない。
だが事情を説明し退職を申し出た有紗に、彼はそのようなことはひと言も言わず、まず父のことを尋ねた。
「それでお父さまのお身体はどうなの?」
「手術は成功しましたし、このままきちんと通院すれば、問題なく日常生活を送れるようです。しばらくは定食屋を一緒にしようと思います。家族は私だけですので……申し訳ありません」
有紗が頭を下げると、彼は首を横に振った。
「謝ることではないよ」
「ですが、せっかくいろいろおしえていただいたのに……申し訳ありません」
自分に、そんなことができるだろうか?
有紗はそう心配していたけれど、結局は無用なものとなった。
そうなる前に会社をやめることになったからだ。
故郷で小さな定食屋を営むひとり暮らしの父親から、身体を悪くした、手術が必要になり店を閉めて入院するという知らせがあったのが十一月。
無事に退院したと聞いて胸を撫で下ろしていたのだが、年末に帰省した時には家の中は荒れ放題だった。
有紗と父は、父ひとり子ひとりのふたり家族。小学生の頃に病気で母を亡くしてから、父は男手ひとつで育ててくれた。
母との思い出の定食屋をひとりで切り盛りしていた父は、定食屋を閉めたことでがっくりきたのか、少し自暴自棄になっていた。
定食屋を再開した方がいいのだろうが身体の方はまだその段階にない。
ひとりで切り盛りするのは無理だった。八方塞がりだ。
愛情深く育ててくれた父を放っておくことなどできず、有紗は父を支えるため故郷へ帰る決断をした。
龍之介に対しては申し訳ない思いでいっぱいだった。
せっかく能力を認めてもらい育ててもらったのに、わずか一年で離職するのだ。
君の仕事に対する情熱はそのくらいのものだったのかと、失望されても仕方がない。
だが事情を説明し退職を申し出た有紗に、彼はそのようなことはひと言も言わず、まず父のことを尋ねた。
「それでお父さまのお身体はどうなの?」
「手術は成功しましたし、このままきちんと通院すれば、問題なく日常生活を送れるようです。しばらくは定食屋を一緒にしようと思います。家族は私だけですので……申し訳ありません」
有紗が頭を下げると、彼は首を横に振った。
「謝ることではないよ」
「ですが、せっかくいろいろおしえていただいたのに……申し訳ありません」