御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
部屋に入ってきた一際目立つ人物は、副社長の天瀬龍之介。天瀬商事の現社長天瀬一郎の一人息子だ。
 
将来の日本経済を引っ張っていくであろう存在として財界では注目されている人物で、経済誌にもたびたび特集されている。
 
実際、彼が副社長に就任してから天瀬商事はやや弱いと言われていた中央アジアエリアの業績を大きく伸ばしていて、過去最高益を更新し続けている。

すべて龍之介が海外駐在員時代に培った人脈と経験に基づく経営判断の功績だ。
 
しかも彼が注目されているのは、その実力だけではない。
 
百八十センチの長身に、少し癖のある黒い髪、黒い切れ長の目に高い鼻梁、いつも優雅な笑みを浮かべている形のいい唇。

モデル顔負けと言われるほどの容姿に、表紙を飾った号は経済誌にもかかわらずすぐに売り切れてしまう。
 
全身から自信が満ち溢れていると言わんばかりの彼の姿に、有紗は反射的に目を伏せた。

「おつかれさまです、副社長」
 
チームリーダーが、龍之介に声をかける。
 
彼はそれに笑顔で応えてから口を開いた。

「急ですまない、少し時間が取れるんだ。手が空く人がいたら、ランチでもどうかと思って」
 
低いけれどフロアによく通る声でそう言って彼は皆に視線を送る。
 
社員たちがますますソワソワした。
 
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