御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
腕を掴まれて引き止められる。

「変な言い方をして悪かった」
 
彼は有紗を優しく引き寄せて腕の中に抱いた。

「つっ……!」
 
唐突に近くなった距離。
 
少し甘い彼の香りに包まれて、有紗の身体が熱くなる。

どうしてこうなったのか、彼の行動の意図がまったくわからない。
 
混乱する有紗の耳に、龍之介が囁いた。

「話の続きを聞かせてくれ」

有紗は首を横に振る。

「私……だけど……。言ったって……」
 
——もう意味がない。
 
この時点で、有紗の想いは彼に伝わっているはず。

ならば改めて言葉にすることになんの意味があるのだろう?
 
口を噤む有紗の顎に、龍之介の手が有添えられる。

その手に促されるままに上を向くと、切れ長の瞳が有紗を見つめていた。

「言ってくれ、有紗。俺は聞きたい」

「っ……!」
 
唐突に名前を呼ばれて息を呑む。
 
こんな彼ははじめてだった。自分自身を『俺』と呼び、低くて甘い声音で有紗に想いを言わせようとする。
 
射抜くように自分を見つめる彼の目に、特別な色が浮かんでいるように思うのはきっと都合のいい夢だろう。
 
——それでも。

『聞きたい』という言葉に胸が痛いくらい高鳴った。

「私……私は副社長を……」
 
一生懸命に言葉を紡ぐ有紗に、龍之介が熱のこもった視線を向けている。
 
腰に回された腕に力が込められて、顎の手が熱くなった頬を包む。親指が有紗の唇を誘うように辿る。
 
ゆっくりと近づく彼の視線を焦がれるように見つめながら有紗は、その言葉を口にする。

「す、好きだったんです。私……副社長のことが……」
 
その刹那、熱く唇を奪われた。
 
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