御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
「そこで、さっき保留にしていた秘書課への転属の件に話を戻したい」

「……はい」

「ノースエリアに住むのなら、本社の方が位置的にも働きやすいんじゃないか? 当然以前と同じように働けとは言わない。本社における子育て中の社員が使える制度をフル活用してくれてかまわない」
 
天瀬商事の社員が使える子育て関連の制度は日本でもトップクラスだ。

花田商事の今の恵まれた環境と同じ、いやリモートワークを選べるから、さらによくなる。
 
けれどそれは有紗側の事情だ。

「でもそれでは、副社長の秘書は務まらないと思います」
 
役員秘書の仕事はデスクワークではない。上司に付き添い、あれこれ気を配るのが主な仕事でそれができない秘書なんて聞いたことがない。

「今までと同じとは言わないと言っただろう? できる範囲でできることをしてくれればいい。他の部署も時短勤務の社員にはそうしているはずだ。君なら、今までの四分の一の仕事量でも戻ってきてほしいと秘書室の社員は言っている」
 
その言葉に、有紗は心がまた少し動くのを感じていた。彼の言葉が嬉しかったからだ。
 
たった一年しかいられなかった秘書室での充実した日々が頭に浮かぶ。

「君が退職してから、結局私は第一秘書を見つけられず秘書室全体でサポートしてもらっている。皆人使いの荒い私にうんざりしてるのかもしれないな」
 
冗談を言って、龍之介が肩をすくめた。
 
第一秘書を見つけられていないという彼の言葉に、有紗は眉を寄せる。
 
秘書課全体で彼のサポートをする。当面はそれで問題ないと思ったが、まさかずっとそうしているとは思わなかった。
 
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