御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
その間、有紗は各種手続きをひとつずつ済ませていった。

「きゃー!」
 
圭太が声をあげて、有紗が今畳んだばかりのタオルを奪い放り投げその場でジャンプする。

「あ、けいくん……!」
 
慌てて有紗は彼を止めようとして、ハッとして口を閉じた。ここはもといたアパートではない。
 
有紗が元々子供たちと住んでいたアパートは、古い木造の二階。壁が薄かったから、部屋の中の音は、隣の部屋へ筒抜けだった。

有紗はいつも神経を尖らせていたのだ。

ふたりが泣くだけでもヒヤヒヤして、ジャンプなんてもってのほかだった。
 
でもここは、広い敷地に建つ一軒家。双子が騒いでも誰にも迷惑かからない。
 
圭太につられて、康太もジャンプする。楽しそうなふたりの姿に、有紗もつられて嬉しくなった。手を叩てふたりを褒める。

「すごい。上手にジャンプできるねえ」
 
ついこの間歩きはじめたばかりなのに、毎日できることがどんどん増えていく。それを、すぐに喜んであげられるのがありがたい。
 
彼との同居に関しては複雑だけれど……。
 
はしゃぐふたりを見つめながら、有紗は龍之介との今後について思いを巡らせた。
 
副社長室での会談で龍之介が話をしたのは子供たちのことについてのみ。有紗と龍之介の関係についてはなにも言わなかった。

おそらく、子供たちの父と母として、良好な関係を築いていこうということだろう。
 
それに異論があるはずもなく、ただありがたいと思う。
 
だからこそ有紗は不安だった。
 
二年ぶりの再会で、彼への想いがまったく変わっていなかったことを有紗は痛感した。気持ちに区切りをつけて、あの夜の出来事は過去の思い出にしたつもりだったけれど、まったくそうではなかったのだ。
 
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