はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま就寝中。
 朝になりますと木曜日ですねえ。 今日は張り切ってあの交番へ、、、。
 事件も拾得物も迷子も酔っ払いも、、、今は居ない交番でのーーーーーーんびり。
 カー カー、カー カー。 カラスが飛んでいく。
燕も飛んでいく。 雀も飛んでいく。
俺も飛んでいきたいよーーーーーーーーー。
 昭和のお父さんたちは兎にも角にも会社の漬物にされていた。 あの頃は終身雇用だったからね。
 今は就職しても長続きしない。 五月病であっさりと辞めてしまう。
それだからか、退職代行なんていう業者が儲かっている。 変な時代だよ。
ろくすっぽ磨きもせずに金だけのために就職して気に入らなければ代行業者に電話してさっさと辞めさせてもらう。
いったい何がそうさせるんだろう? 働き方は自由だけどさ、だらしなさすぎるよ。
 それだから外国人を入れないといけなくなるんだ。 国民がそういう原因を作っておいて政府を批判している。
批判するくらいならきちんと働けよ。 退職代行なんて使わずに辞職くらい自分の口で言えよ。
 プライドだけは高いのに自分じゃ何にも出来ない坊ちゃん嬢ちゃんが増え過ぎたね。 辛抱できないし磨けないしすぐ切れるし、これじゃあやってらんないよなあ。
 変な意味で自分を大事にし過ぎてるんだよ。 ひょっとこもやし。
 gwみたいな長期休暇が続いたら辞めたくなるんだって。 何処まで甘えてるんだ?
 あんたら昭和の時代に送り込まれたらみんな耐えられないね。 確かに就くも辞めるも自由だしあんたの権利だとは思うけど。
 自分勝手に生きたいんだったらつまらんことで文句を言うんじゃないよ。 考えが甘っちょろいんだ。
 ちょっと厳しく言われただけで「もうダメだ。 働けない。」ってぶち撒けるんだろう?
働きたくないんだったら川の水でも飲んで干乾しになってなさい。 邪魔だから。

 かと思えばYouTubeで金が入るからっていい気になってるやつもたくさん居る。 そんなの仕事でも何でもねえよ。
ただただ好きの延長でやってるだけだろう? 誰も見なくなったら終わりじゃないか。
それを仕事だって思うのは勝手だけど何も残せないんだよねえ。 虚しいだけじゃないか。
 しっかり仕事をしてその上でやってるんなら褒めてやるけどさ。
 ユーチューバーでも最近はお騒がせな終わってる連中も多いからね。
 おもちゃ系ユーチューバーなんて居るけど、長くはやってられないだろう。 買い集めたおもちゃを保管するだけでも大変だ。
それだけで部屋を何個も借りなきゃいけなくなる。 部屋は物置じゃないんだぞ。
 そのうちにアパートを丸ごと買いたいって言い出すんじゃないだろうなあ? 住居は住居だからね。
 かと思えば年中虫を扱ってるユーチューバーモ居るよね。 いろいろと生態が分かっていいとは思うんだけど、、、。
ちょいとえげつなくないかい?
 みんなさあ、目的が「金のため」なんだよ。 そんなんで虚しくならないのか?
金はあの世まで持っていけないんだぞ。 何千億溜め込んだって持っていけないんだぞ。
分かってるか? 食えて適度に遊べればいいだろう?
贅沢したいやつほど度ケチなんだよなあ。 ほんとにおかしいよ。
 さてさて、今日こそは姉ちゃんも働いてるかな? 巡回のついでにショップを覗いてみますと、、、。
(おー、居る居る。 ちゃんとやれるじゃないか。) 珍しく接客してますねえ。
この分だと交番には来ないな。 そう思って巡回を続けますです。
 橋の所にまで来ました。 野良猫が騒いでる。
何をやってるのかと思ったら集団で牝の奪い合い。 元気いいなあ。
 ああやって今年も子作りをしてるんだなあ。
 橋から中通りを抜けて劇場の辺りに来ますと、この辺りはいつ見ても物騒だよなあ。
 看板は錆びたまま放置されてるし、劇場もそのままだし、壊さないのかな?
壊してくれてもいいのになあ。 なんか音がする。
と思ったら中で物を漁っているやつが居た。 廃墟泥棒か。
 確かに働いてた女の子たちの衣装もそのままに置いてあるって言うからね、狙いたくなる気持ちも分かるよ。
でも40年以上前のやつだろう? 大丈夫なのか?
 ブラブラと歩き回ってまたまたショップの前に来ました。 「やあ、良太。 何してるの?」
「ワワワ、姉ちゃんだあ。」 「そんなに驚かなくてもいいじゃないよ。」
「驚くよ。 いきなり出てくるから。」 「出て来ちゃダメなの?」
「ダメダメ。 働いてなさい。」 「あ、待てーーーーーーーーー!」
ってなわけで今日も姉ちゃんに追いかけられる俺なんです。 もうヒルナンデス。
 あー、今日もまた冴えない姉ちゃんに掴まってしまった。 どうしましょう?

 世の中、デフレ脱却から賃上げへ動き始めている。 中には「最低賃金を1500円にしろ!」なんて勝手に騒いでいるやつらも居る。
じゃあさあ、その意見に賛同して賃金を上げたとしよう。 ほとんどの企業は二か月持たないと思う。
 だって今の平均が12万だとして7万から9万一気に給料を引き上げることになるから。
よっぽど儲かっている企業なら出せないことも無いだろうけど、日本の9割は中小企業なんだよ。
一気にやってしまうと6割くらいは倒産するだろうね。 それが分かってるのかな?
 1980年代、確かにバブル景気だった。 でもあの頃の最低賃金は今よりかなり低かった。
 だから企業は残業手当とかボーナスで振舞ってくれたんだよ。
あの当時だって給料をいきなりアップしたら大変なことになってたよ。 韓国を見れば分かるだろう?
貯蓄主導型の経済は長続きしないんだ。 それが分かってないよね。
 昼になり、弁当を食べていますとどっかのばあさんがやってきました。 「あのー、迷子になったんですけど、、、。」
「何処に行くの?」 「家が西原町だからそっちに帰ろうと、、、。」
「分かった。 いいのが居るからこの人に付いていきなさい。」 俺はそう言って姉ちゃんを前に押し出す。
「何であたしなのよ?」 「いいじゃん。 ショップからまっすぐ行ったら西原町なんだし。」
「あんたの仕事でしょう?」 「いいの。 ポテチおごってあげるから行ってきて。」
 ブツブツ言っている姉ちゃんを押し出すとドアを閉めます。 「ああ、ああ、、、。」
焦っている声が聞こえるけど昼休みが無くなるから聞こえない振りを決め込んでっと。
 そのまま姉ちゃんはばあさんを連れてショップのほうへ歩いていきました。 ひどい弟だよなあ。
たまにはいいか。
 なんか無線が騒いでる。 (何だろう?」
出てみたら「おー、無線は壊れてないようだな。」だって。 焦らせるなよ 馬鹿。
 さあ昼休み、しばらくは何も無いから昼寝でもしましょうか。 そう思って机に俯せてると、、、。
トントントン。 「入ってまーす。」
トントントン。 「ダメでーーす。」
トントントン。 「いい加減にしろや。」
 またまた姉ちゃんがやってきました。 「ほんとにあんた、ここしか来る所が無いんだねえ。」
「しょうがないでしょう。 あんたしか居ないんだから。」 「何がだよ?」
「あたしの相手をしてくれる人。」 「しょうがねえだろう。 もてないんだからさあ。」
「ひどいなあ。 姉に向かってもてないだなんて、、、。」 「事実だからしょうがないよね。」
「あんたはどうなのよ?」 「けっこうファンは居るんだよ 俺。」
「ファンねえ、、、。 猫?」 「は?」
姉ちゃんの返事に俺は躓いてしまった。 「んもう、、、。」
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