はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま就寝中。
 「あんた、もうすぐ帰るんでしょう? 焼肉のたれと牛肉と玉ねぎとニンジンを買って来てよ。」 母ちゃんからの電話が掛かってきました。
そろそろ業務も終了ですねえ。 背伸びをしてお茶を飲んで留守電をセットしたら札を下げて鍵を掛けます。
「ファーーーーーーーー、もう夕方だ。 飲むやつも居ないし彼女も居ないし、のんびりと帰りますか。」
バス停では帰宅途中の高校生が何か話してます。 聞いていても分からないのでスルーですよ。
ここね、最終のバスは8時半なの。 早過ぎるって思うっしょ? そうでもないんだよ。
寄るような店も無いし、バスに乗り遅れてもタクシー会社が近くに有るから帰れるし、、、。
だって廃墟ばかり並んでるんじゃ長居したくないよ こんな所。
 あの劇場だってさあ、流行ってた頃は女の子がいっぱい出てたんでしょう? あの頃は賑やかだったもんねえ。
空いてる時間には売れる前の漫才コンビが出てたんだし、、、。
 女の子とはいってもお芝居をやってたんじゃないんだよ。 ストリップダンサーだった。
微妙に見えるような見えないような、、、それでいてお金をくれる人には余す事無く見せてたんだってねえ。
今の世の中、世知辛いというのか、何でもかんでも締め付け過ぎというのか自由が無くなったよね。
何か有れば年齢認証だ、自己証明だ、許可証だ、何だってうるさいよねえ。
プライバシーとかプライベートとか個人情報がどうのとか、守りたいのは分かるけどさあ、、、。
とか何とか言いながら一方では無茶苦茶だったりする。 だからきちんと守ってる俺たちが馬鹿らしくさえ思えてくる。
 ネット社会なんだからさあ、管理する物はきちんと管理してくれよ。
文句を言いながらスーパーで買い物をして、、、。 「あらあら、お巡りさん 今日も買い物ですか?」
「そうなんだ。 母ちゃんがうるさくてねえ。 焼肉するんだってさ。」 「まあ美味しそう、。 一度は呼んでくださいよ。」
店員さんと話しながら買い物を済ませて自転車へ、、、。
 籠に荷物を入れて、エイヤーっとばかりに漕ぎ始めるんです。 いつものようにね。
お巡りさんがママチャリで買い物をして帰るなんて微笑ましいじゃないですか。 ねえ、皆さん。
って誰に声を掛けてるんだか?

 我が家の前には古くからやっている駄菓子屋さんが在ります。 俺もよく買いに行ったわ。
10円や20円で帰るようなお菓子が積まれてたんだよなあ。 今も有るみたい。
そこの店先には梅干しばあちゃんがニコニコしながら立ってる。。 いつもお世話になってます。
 小学生の頃なんて毎日行ってたよね。 大好きだったあの子と一緒に。
あの子って誰だよ? うーん、姉ちゃんだよ。
 俺ってさあ、いたずらっ子で有名だったから同級生からは嫌われてたのよね。 んでいつも寂しそうにしてるからって姉ちゃんが付き合ってくれてたの。
雨が降ると姉ちゃんと相合傘で、、、。 だから同級生からは「お前たち 兄弟でくっ付いてるのか?」っていつも笑われてた。
 まあねえ、姉ちゃんも意外と可愛いほうだし、頭もいいし、俺とはずいぶん違うんだよねえ。
だからって姉ちゃんが誰かと付き合ってるって話はまだ聞いてない。 彼氏はまだ居ないみたい。
 「ただいまでーーーす。」 「そんなに叫ばなくても聞いてるわよ。」
玄関を開けたら母ちゃんが飛んできた。 「ご苦労さん。 焼くまで待っててね。」
荷物を取られた俺は着替えるために自分の部屋へ、、、。
隣には姉ちゃんの部屋が在ります。 居ても居なくてもドアは開いてまして、、、。
「たまにはさあ、ドアくらい閉めたらどうなのよ?」 母ちゃんも言うんだけど、なんか気にしてないみたい。
「開けてたって誰も見ないでしょう?」だって。 着替えてたらみんな見るわな。
30そこそこでスタイルもそれなりにいいんだし、ちっとは考えてくれよ 姉ちゃん。
 どっか平和な俺と姉ちゃんなんだけど、二人して結婚する日は来るんでしょうか?
占ってみるとね、「気になる相手は近くに居ます。」とか「いずれ現れます。」とかなんだよ。
近くに、、、とか、いずれ、、、とかって何なんだよ?
それが姉ちゃんだったらどうしようねええ? 皆さん 何か答えてよ。
 何をしているのか分からない交番で本を読みながらのんびり過ごしている毎日。 姉ちゃんはというとなぜかスマホショップで働いてます。
だからたまに「この新機種を使ってみない?」って俺に言ってくるんだ。
「スマホを使うような用事も無いからいいよ。」って言うんだけど、「じゃあさあ、あたしとメールしてよ。」って言ってくる。
あんたねえ、何で俺が姉ちゃんにメールしなきゃいけないのさ? 彼女でもないんだぞ。
「いいじゃん。 彼女だと思ってメールしてよ。」 あんまりに言うものだから3か月ほど契約してスマホを使ってやります。
 「ハロー。 元気?」 (隣に居るのにこれかよ。)
「波浪注意報。 五月様はお元気ですか?」 わざとらしく返してやる。
すると、、、。 隣の部屋から机を叩きながら笑っているのが聞こえてくる。
そうそう、ちゃんとハートマークも三つくらい入れてやるんだ。 一応は女の子なんだからさ。
 するとねえ、胸キュンメールが返ってくる。 溜息しか出ないわ。

 「焼けてきたわよーーーーーーーーーーーーーー。」 母ちゃんのどでかい声が聞こえてきた。
さっさと行かないとまずいぞ。 あの顔で噴火されたら鬼より怖いんだから。
 さてさて、肉を摘まみながら今夜はビールを飲みますね。 たまにはいいじゃん。
いっつも真面目そうなしみったれたような顔してるんだからさあ。
「あんた、交番はどうなの?」 どうなのって聞かれても困るんですけど。
平和ボケしてますよ。 毎日毎日、鉄板の上で焼かれたい。
「暴力団なんて来たらあんたは一瞬でお終いね。」 物騒なことを言うなあ。
この町で暴れるのって親父しか居ないでしょうが、、、。
「五月はどうなのよ?」 「どうって何が?」
「仕事はうまくやってるの?」 「まあ、なんとかねえ。」
「揃いも揃って冴えないなあ。」 親父に言われたくないわ。
親父だってずーーーーーーーーーっと窓際じゃん。 いいこと有ったのかなあ?
 テレビは点けてません。 点けたって誰も見てないから。
 最近のワイドショーもバラエティーショーも形だけで中身が無いからさ。
ベストテンのほうがよほどに良かったよ。 復活しないかなあ?
 ああもう、、、。 腹いっぱいで動きたくないわーーーーーー。
ってか、もうこんな時間なの? 9時半だって。
見たい番組も無いし面白い話も無いし、暇だから寝ますですよ。 グーグー。

 世間じゃあ中国に酔い痴れてる人たちもたくさん居るけれど、どうも好きになれないのよねえ あの国は。
まだまだ良さそうな胡錦涛だってチベットでさんざんにやらかしてるじゃない。 偽善者は何処まで行っても偽善者なんだよ。
あやつを立派な指導者だって褒め上げてた人たちも居るけどさあ、まったく信じられないよ。 嘘吐きは嘘吐きじゃないか。
 チベット制圧を鄧小平に認められて国家主席にまで上り詰めたんでしょう? 悪人中の悪人じゃないか。
 それを考えると習近平に追放されたって可哀そうとも何とも思わないよなあ。 盗人が盗人を追い出しただけじゃないか。
あーあ、、、どうしたらこうまで捻くれるんだろうねえ?
< 5 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop