魅惑の絶対君主
「はい。さっき沸いたばっかりです。すぐに入りますか?」
「そうだね。一緒入る?」
「はい。……、……え?」
わたしが「え?」っと発したとき、相楽さんは豚の角煮にお箸を伸ばしていた。
「うん。思ったより脂っぽさもなくて食べやすい」
「お、美味しいですよね。食べたとき、すっごく感動したんです。わたしの知ってる豚の角煮じゃないって」
「中華寄りの本格的な味付けだね。スパイスはたぶん八角かな。赤ワインに合いそう」
無関心そうにしながらもいきなり専門家のようのことを言い始めるのでびっくりしてしまう。
生まれてこのかた、料理とかしたことなさそうだと勝手に思ってた。
でも……今はそれよりも。
相楽さん、さっきお風呂に『一緒入る?』って言わなかった?
聞き間違い……?
「あの……お風呂入りますか?」
お皿の角煮がなくなったタイミングで再度尋ねてみる。