魅惑の絶対君主
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ぱしゃん、ぱしゃん。

もう何度お湯を肩に掛けたかわからない。


寒いわけじゃない。
むしろ恥ずかしさで火照るほどなのに、落ち着かずについこの仕草を繰り返してしまう。



覚悟を決めて一緒にお風呂場へ行ったはいいものの。

緊張のあまり石像のごとく固まったわたしを見兼ねた相楽さんが

『冬亜が先に入って、準備できたら声かけて』

と猶予をくれた。



だからお言葉に甘えて、お先に体を洗ってシャンプーもリンスまで済ませて──今、浴槽の中。


すぐそばで相楽さんがシャワーを浴びているので、目のやり場がなくて困り果てる。


出会ってまだ3日目の人とお風呂に入ることになるなんて思いもしなかった。


相楽さんはこういうの慣れっこなのかな……。


ちらっと一瞬、ほんとに一瞬だけ顔を上げてみる。



「……っ」


だめだっ、やっぱり刺激が強い……!

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