魅惑の絶対君主

顔面ごとお湯に突っ込んだ。


思ってたとおり体の線が細かった。

でも、弱々しさは微塵もない。


全体的にしゅっと締まってて、鍛えられてるなあって感じの身体。

喉元、首から肩にかけてのライン……どこを切り取ってもたしかな「雄」を感じた。



……男の人、なんだなあ。

そんなのあらかじめ知ってたことなのに、改めてハッとさせられた気がした。



──『もう自分の好きなところ覚えたでしょ』

──『触ってくださいって、ちゃんと言える?』



湯船の中、昨日の夜の相楽さんの声が蘇ってくるともはや茹でダコさん状態。


叶うことなら「お先に失礼します」と言って今すぐあがりたい。


息を止めるのも限界がきて、ぷはっと水面から顔を上げた──瞬間。



「わ!?」


目の前に、端正な顔。



「顔つけてなにやってんの」

「……、な、何秒息止めれるかなって思って」


「8秒だったよ」

「えっ」


「俺なら1分は余裕かな」

「し、死にますよ」
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