魅惑の絶対君主
「経験がないぶん、俺は冬亜に時間をかけて覚えさせなきゃいけない」
わたしに悪態をつきながら、どうしてこんな甘えるような仕草をするのか。
さっぱり理解できない。
その支離滅裂さに心を乱される。
「みなさんそんなに優秀だったんですね」
「だいたいウチの商品としてやってくるのは嬢あがりとかウリやってる女がほとんどだからね、俺が直接教えるまでもなかった」
「え……。じゃあ、オークションまでの間、相楽さんは何をしてたんですか?」
「逃亡の見張り。あとは精神管理のためにご機嫌とりをテキトウに」
「へえ、なるほどお……」
じゃあ……相楽さん自ら体に教えこむ、みたいなことはなかったんですか……?
浮かんできた疑問は、生々しすぎるのでさすがに呑み込んだ。
「ていうか。お前勘違いしてない」
「え? ──、ん」
水音を立てて、相楽さんの手がふと唇に触れた。
「商品管理はあくまでサービス残業みたいなもん。メインの仕事は別にあるんだよ」