魅惑の絶対君主


涙が膜を張って、わたしの視界を白く濁した。


ああ……わたしって本当にだめだなあ。


頑張るって決めたのに雑念に振り回されてばっかりで、結局また手を煩わせて。

これじゃあ逃亡の計画も進むどころかマイナス。


お母さんにももう会えないかもしれない……。


相楽さんがどんな表情をしてるのか見るのが怖い。

視界がぼやけてぼやけて、このまま何も見えなくなればいい……なんて。



「冬亜」

「……ん、」


視界が暗くなったかと思えば、次の瞬間、唇に柔らかい感触。

びっくりして瞬きをした反動で、視界がクリアになる。


え……どうして、キス?


戸惑っていると、またすぐに重なった。



「……っ、ぅ、さがらさん?」

「口開けて。それくらいできるでしょ」

「ん……、あっ」


さっきはあんなにガチガチだった体が、今度は催眠にかかったみたいに素直にいうことをきく。


角度を変えて、何回も、何回も。

唇から伝わる熱に、次第にほどよくのぼせたようにくらくらしてくる。

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