魅惑の絶対君主
相手は、わたしをオークションに出そうとしてる人なのに。
言い換えれば、3ヶ月後わたしを地獄に落とす張本人なのに。
もっと話したい……なんて、本当におかしいと自分でも思う。
相楽さんが悪いんだ。
初めて会ったときから怖そうで危なそうで、でも、いいとこのお兄さん、にも見えて、まるで掴めない。
おまけに自分のことを何にも話さないから、どんな人なんだろうって気になってしまう。
いやこれは、寂しいが故の言い訳?
相良さんに構ってもらわなきゃいけないほど、わたしは寂しいのかな。
──まあ、なにはともあれ、戦に勝つためにはまず敵を知るところから、って言うし。
「ベランダ、わたしも出ていいですか?」
「………」
「あ、えっと。逃げようとか考えてるわけじゃないですよ」
まだ火の灯らない煙草を咥えたまま、少しのあいだ考える素振りをして。
「わかった」
と相楽さんは言った。