魅惑の絶対君主

だけどよくよく考えれば、これもサービス残業の一環に違いない。

自分の不在時に担当の商品が何をしていたか、見張りの意味を込めて尋ねただけ。



「昨日は、課題をしてました」

「課題って宿題のこと?」


「はい。英語の次の単元を必死に訳してたんですけど、電子辞書を前住んでたアパートに置き忘れてきたみたいで、猿もびっくりのトンチキストーリーになっちゃいました」

「ははっ、まじか。あとで見せてよ」


「っ、え」

「ん?」


いや、まさか笑いかけられるとは思ってなかったから……。

なんか今、すごくナチュラルな笑顔だった気が……。


それはさておき、胸がぎゅって締まった感じがして、ちょっと苦しい。



「見せられないよって?」

「は、い……。恥ずかしいので……」

「なんでも恥ずかしいねえ、お前は」



アーモンドアイが瞳がすうっと細められる。

あ、これはお馴染みのからかうときの笑顔だ。

こっちのほうがいい、落ち着くから……。

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