魅惑の絶対君主
そしてぐいっと顔を近づけられるから、心臓がバクン!と跳ねて。
少しでも動けば唇が触れ合いそうな距離に、視界がぐるぐるしてくる。
このままキスしながら押し倒されるのかな……?
この家に来てからの経験を踏まえて予想してみたけど、唇が落ちてくる気配はない。
「……相楽さん?」
「まずはキスの練習からね。冬亜からキスできたら今日は終わりでいいよ」
「え……それだけで、いいの?」
「手っ取り早く快楽叩き込むんじゃなくて、ちゃんとステップ踏ませてあげるの優しいでしょ」
にこ、と微笑まれれば考えるより先に頷いてしまう。
しまった。
「ほ、本当にそれだけでいいんですね? 1回チュッてやったらもう眠っていいんですね?」
「そうだよ。さ、いつでもどうぞ。俺は逃げたり隠れたりしないから簡単でしょ」
昨日は服を脱がせて一緒にお風呂を強要したのに、いきなりハードルをさげてくるなんて。
何か裏があるんじゃ……と勘繰らずにはいられない。