魅惑の絶対君主

「ううん、これでいいんだよ。目立たないに越したことないから」

「えー、せっかく付けてきたのにもったいない」



だって、トイレの鏡を見るたびにこの存在を思い出して鬱になりそうなんだもん……。


学校にいる間は普通に学校生活を楽しみたいのに、常に監視されてると思うと気が重くなる。



いや、行かせてもらえてるだけ奇跡なんだ。

本来、わたしは今日から病欠の予定だったんだから……。



ふと相楽さんの顔が頭によぎる。



──今朝、相楽さんは約束通り学校まで送ってくれた。


びっくりなことに、アパートから電車で通っていたときよりも、相楽さんの家から車で登校する時間のほうが遥かに短かった。


案外身近な場所に住んでいたんだなあって、なんとなく不思議な感じがした。


そういえば相楽さん、今朝も何も食べずに家を出てたなあ。


煙草はいつものごとくスパスパ吸ってたけど、まさかあれでお腹が満たされるわけ……は、ないだろうし……。

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