魅惑の絶対君主
わたしが押し付けた豚の角煮以外に、相楽さんが何かを食べているところを見たことがない。
もしや、人間じゃない……?
そんなわけないってわかってるけど、非現実的な妄想をしてしまうくらい相楽さんは浮世離れしている。
整いすぎた容姿もそうだし、なんでも見透かしてくるエスパー的なところもそうだし。
お腹が減ったときに食べる主義って言ってたから、お仕事のあいまに食べてはいるんだろうけど……。
いつか倒れちゃわないか心配……。
「──ちゃん……、おーい冬亜ちゃん?」
レオくんにのぞき込まれ、ハッと我に返る。
目の前でバラバラと動く指先に、すっとピントが合わさった。
あれっ。
「わたし、意識旅行してた……?」
「うん。廊下歩きながら喋りかけてたのにずっと無視されてた」
「っな! ごめんね、なんかぼーっとしてたかも」
「いや、冬亜ちゃんがぼーっとしてんのはいつものことだしいいんだけど。……なんか、深刻な悩みだったりする?」