魅惑の絶対君主
「………」
あれ、返事がない……?
まだ視界がぼやけたまま。
とりあえず瞬きをしようとするも、またすぐにまぶたが落ちていく。
そしたら、またゆさゆさされる。
しっかりしろ、っていうみたいに。
そうだよ、課題やんなきゃいけないんだよ、わたしは。
離れていく意識をどうにか手繰り寄せた。
「今日の単元ね、ノート写すの間に合わなかったの……だからレオくん、」
「嫌だ」
「えぇ……そんな、おねがい、なんでもいうこときくから……」
「……へぇ。じゃあ課題なんかやめてベッド行こ、冬亜」
おかしいな、レオくんはそんなこと言わないはずなんだけど……。
あれ? そもそも、レオくんの声ってこんなに低かったっけ……?
何度か瞬きをすると、ぼやぼやしていた景色が次第にクリアになっていく。
微かに……煙草の匂い。
次の瞬間、はっきりと相手の輪郭を捉えた。