魅惑の絶対君主
この人に教える義理はないのに。
ゆっくりと背中をさすられると、喉奥につかえていたものが徐々に溶けていく。
息をするのが、ちょっとだけ楽になった……。
「最初に、オークションに出されるって聞いたとき、お母さんのためだから大丈夫、頑張れるって思ったんです。相楽さんに頑張りますって言ったのも嘘じゃないです。ちゃんと頑張ろうって本気で思いました」
あーあ。なに打ち明けてるんだろう。
次から次へと勝手に口をついて出ていってしまう。
文脈もぐちゃぐちゃで、自分が今から何を言いだすのか、自分でもわからなかったりする。
「オークションに出されたあとは、好きでもない人に体を差し出さなきゃいけないって聞いて、お金のためなら受け入れなきゃなって……。ちょっとくらい痛かったり苦しかったりしても我慢すればいいだけだし」
「………」
「商品は商品らしく感情を捨てようって思って、相楽さんに教えてもらうときも、わたしは商品だから、って言い聞かせて……」