魅惑の絶対君主
あらかじめ相楽さんが仕事に行くって知ってたら、こんな風に泣かずに耐えたのになあ……。
わたしってつくづく──
「人間は体の構造上、気持ちよくなれるようにできてんだよ。俺がそういう風になるように教え込んでるんだから、冬亜がみっともないわけじゃない」
とつぜん、思考を遮るように声が落ちてくる。
もしかして、さっきわたしが泣いたから……?
ネクタイを締めながら相楽さんは続けた。
「冬亜が商品なのは間違いないけど、べつに俺は“物”を管理してるつもりはないからね」
「………」
「少なくともさっきは、“冬亜”を抱こうとした」
気だるい声を最後に扉が閉まる。
微かな煙草の香りが、いつまでも部屋に残っていた。